今回は理学療法や作業療法士を目指す学生さんには他人ごとではない、自殺問題について取り上げてみます。
これから理学療法士を目指す方、現在養成校に通っている方にはぜひお読みいただきたいです。
先日理学療法学生の自殺問題に対する裁判が神戸地裁でありました。
知らない方のために簡単に問題を整理しておきましょう。
関西のある専門学校の理学療法学生が、実習中に自殺しました。これに対して遺族が病院と専門学校を相手取って損害賠償を求めて裁判を起こしました。
裁判長は、ここに至る学校の配慮が欠けていたことを認めましたが、病院側の指導に問題はなかったとしています。
今回の判決は暴飲と学校側に110万円の支払いを命じています。
さてこの問題を聞いて、みなさんはどう思ったでしょうか。
以前、理学療法の実習についてお伝えしたことがあります。このときはTwitterで何度もリツィートされて反響がありました。
ご存じない方はこちらをご覧ください。
私を含め、いま理学療法士になっている者のほとんどは死ぬほど厳しい実習を経験しています。もちろん私もそうです。
そういう苦い経験がみんなあるのに、いざ自分がバイザーになると同じような仕打ちをします。
これはある意味日本人の体質というか、封建制度のなごりのようなもので、運動部の中で起こってきた体罰に似ています。
人生最大の試練
私が一番きつかったのは2年生で行った評価実習でした。
1期目の評価実習は急性期の病院だったのですが、それなりに楽しくやれて、「あぁ、実習もどうにかなるかな」と思っていました。
ただ2期目の実習先が、私の専門学校の実習先の中でも厳しいと言われている実習先でした。しかもバイザーはその病院の中でも厳しいと言われる先生。
簡単には行かないだろうとは思っていましたが、本当に簡単にはいかなかったです。
まずバイザーと会話がない。指導や指示はありますが、挨拶以外の世間話はなし。実習生がリラックスしてやらせてくれるような状況は与えてくれません。
いつもは会話の中から人との距離感をつかむ自分にとっては、これだけでもかなりのストレスです。
余談になりますが、バイザーと世間話をしたのは実習終了後の飲み会でした・・。
次にとにかく課題が多い。その日やったこと、わからなかったこと、レポート関連のものなどなど、とにかくやらないといけないことばかり。
おかげで全然寝れませんでした。
睡眠時間データ
1週目の睡眠時間
月曜が祝日だったため火曜日スタートで土曜日までで、火曜の夜:4時間、水曜の夜:2時間、木曜の夜:2時間、金曜の夜:0時間。
後にも先にも、全く寝ずに病院にいったのはこのときだけです。
2週目の睡眠時間
月曜の夜から金曜の夜まで毎日45分!
2週目は過酷を極めました。朝の5時半に寝て6時15分に起きる生活を1週間続けました。人間、追い込まれたらなんとかあるものなんですね。
3週目の睡眠時間
月曜から木曜の夜まで(最終週は土曜がないため)毎日約1時間。
最終日はさすがにきつかったです。帰りの電車は終点で起きられずに折り返しかけて、さらに環状線を半周ぐらいオーバーしてしまいました。
心身ともに疲れ果てて、28歳にして親の前で「おかん、もう無理かもしれん」って泣きました。ええ大人がお葬式以外で親の前で泣くことってあんまりないですよ。
そんな私を母は「もうちょっとだけがんばってみ」と温かく送り出してくれました。しかもその日実習を終えて家に帰ってきたら、山のような栄養剤が食卓に置かれていて、それを見てまた泣きました。
「やらなあかん」と腹をくくったのはこの時ですね。
実習中はカフェインのドリンクや栄養剤が主な食べ物だったため、おしっこの色が変でした。毎日どれだけ飲むんやって思うほど、ドリンク剤を飲んでましたね。
病院に向かう朝はつらかったです。またいじめられる、このまま電車に飛び込んだ方が楽かなって何度も思いました。
これは本当です。
そんな実習中ですが、さらなる誤算とラッキーが同時降ってきました。
担任が入院
1週目の途中で実習がうまくいっていないと学校に電話しました。
担任は甘やかせてくれる人ではありませんでしたが、誰よりも学生のことを思ってくれる人でした。
「そしたら私が行くまでなんとかがんばり!帰りにおいしいもんでも食べに行こう」という言葉をいただき、先生が来てくれるまではなんとかしようと思っっていました。
そうしたら通日後に学校から病院に電話があり、担任が入院して来れなくなったとのこと。しかも他の先生も予定が埋まっていて、私の実習先への訪問はなくなったとのこと。
( 」゚Д゚)」オ──イ!!
って心の中で思いっきり叫びました。ついてないときはこんなもの。これが誤算の部分です。
同時にいった実習生との関係
小さい病院の場合、たいてい実習には一人でいくのですが、別の学校から実習生が来ていることがあります。
この別の学校から来ている実習生が自分の運命を左右することもあります。
どういうことかと言うと、私が行ってたときに来ていた別の学校の実習生のできがあまり良くなく、病院の先生の中でその子の指導方法をどうしていくか、議論になることが増えてきました。
相対的な評価なんてありはしないのでしょうが、そちらに目が集まる分、こちらのマークは少なくなります。症例報告も同時にやりますから、印象はけっこう良くなりました。
これがラッキーの部分です。
長くなりましたが、こんな感じでなんとか実習は乗り越えました。乗り越えたという表現が本当に妥当で、本当に苦しい思い出しかありません。まさに修行ですね。
もちろんいまから考えると自分の至らぬ点が多かったことも事実ですし、もっと能力がある人なら同じ環境でももっとうまくこなせているのかもしれません。
でも実習生が勉強ができる環境を作ってくれているかというとそうではなく、プレッシャーを感じ続けていたのも事実です。
ここに書いたのは私の苦労話ですが、私の同級生でもっと過酷な実習を耐えてきた者もいました。
ひどいのでいえば、眠気で膝から崩れ落ちてるのに、「ボケ何寝とんじゃ!」って罵声を浴びさせられたり、当時30歳の同級生はタバコを吸いながら21歳のバイザーに1時間ぐらい立たされて説教されたり・・・。
まあみんないろんな経験をしています。でもこんなのは明らかにやりすぎで、勉強ではありません。
こんなことを繰り返していたら、自殺する人が再びでる可能性だってあります。でも多くの理学療法士がそれに気づいていません。
実習地となっている病院に聞くと、「こちらも忙しい中、みてやってる」と言うことがあります。そう思うなら、実習なんてとらなければいいのにって私は思います。
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まとめ
理学療法学生の自殺問題に絡んで、同級生や私の実習の話をお伝えしてきました。
最初に書いた判決でも、病院側にも慰謝料の支払いを命じると書かれていますが、病院側は問題なかったとしています。
支払い命じてるのに指導に問題はなかったってどうなんでしょう?
実習はあくまで勉強させてもらう立場ですので、挨拶をしない、課題をやらないなどの無礼があってはいけないと思いますが、学生なので完璧にできること絶対にありません。
そのあたりにしっかり理解して指導してくださる方ばかりであればいいのですが、まだまだ勘違いしているセラピストは多いように思います。
厳しい実習の中でも私を支えていたのは、絶対理学療法士になって見返してやるって気持ちです。「あなたたちのようにはなりません」と心の中で強く決意していました。
これからの理学療法士を目指す方には嫌な話題かもしれませんが、厳しいバイザーと対峙しても絶対に自分を見失わず、理学療法士になってくださいね。