医療系の学生のみなさんへぜひ聞いて欲しいアドバイスです。解剖学は単純に覚えようとして覚えられるものではありません。
あるコツを守れば自然に頭に入ってきます。そのコツとは?
「解剖学が覚えられない・・・(ToT)」
理学療法士でも作業療法士でも、看護師、柔道整復師でも関係なく、医療系の学生には一度は訪れる壁ではないでしょうか。
理学療法士作業療法士なら、
「◯◯筋の起始・停止はどこで、支配神経は△△で、作用は□□、髄節レベルは??・・・」
とひとつの筋肉だけでも覚えることはたくさんあります。
筋肉でも100を超えますし、骨も200以上、これに神経、血管、内臓、脳などを加えると、解剖学だけでも膨大な量を覚える必要があります。
そんな膨大な量の解剖学を正攻法で覚えようとしても、それは無理な話です。人間の記憶はそれほど良くはないですし、すぐに忘れていく生き物です。
だからといって仕事をするのには覚えないといけませんよね。
余談になりますが、テストのために覚えるのはやめた方がいいですよ。こんなことをしていても、何の意味もないですからね。
そこで今回は私が実践していた解剖学の覚え方をご紹介します。この方法は正攻法で覚えるよりめちゃくちゃ楽です。
ご興味があればぜひ最後までご覧ください。
黒板消しを極めた先にあったもの
高校1年のとき、物理を教えてもらっていたY先生の話をします。
「あれ?解剖学の覚え方の話をするんじゃないの?」
大丈夫です。最後まで読めばあなたの勉強法は確実に変わります。
私の高校には変わり者の先生が多かったのですが、その中でもY先生はかなりの変わり者とされていました。
社会や国語が得意で文系に進もうと思っていた私には、そのY先生の話はとてもマニアックで、正直授業にはついていけませんでした。
わかりやすくいうなら、最近よくテレビにでている東進ハイスクールの講師からわかりやすさを差し引いた感じでしょうか。(つまりマニアックな感じだけ)
そのY先生の授業で覚えていることがふたつあります。ひとつは漫画に出てくる悪キャラが振り回している鉄球は、持っている手よりも上にいっていることが多いが、持ち手より高くなって回すことはできないというどうでもいい情報。
そしてもう1つは、黒板を毎日きれいに消すことができれば、京都大学に合格できるということでした。
私の通っていた高校はいわゆる進学校だったので、最難関大学に合格する学生もいます。もちろんしっかり勉強して上位の成績をおさめていればの話ですが。
しかし、先生が突然口にした
「黒板を毎日きれいに消す作業」
は勉強とは関係ありません。とにかくひたすら毎日きれいに消すこと、それが条件だとおっしゃっていました。
もともとついていけなかったため授業にはあまり入り込めていませんでしたが、「またなんか変なこと言うてるわ」と聞き流していました。
ただおもしろいことに、それを実践する者が現れました。さすが変わり者の先生が多い学校で学ぶだけあり、変わり者の生徒はいるものです。
その子は毎日放課後に黒板をきれいに消して、明日使える状態にしていました。
最初は「本当にやってる!」とみな好奇心で見ていたのですが、それが毎日続くと「本当に成績上がるの?」と違う好奇心沸いてきます。
結論から申し上げると、その子の成績はどんどん良くなっていきます。
2年生になってクラスが分かれたため、黒板を消し続けていたかはわかりませんが、京都大学に合格しました。
もともとクラスでも目立った成績ではありませんでしたし、すごく勉強熱心だったわけではない彼に、一体何が起こったのでしょうか。
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ひとつを極めることの大切さ
スポーツを例にとるとわかりやすいかもしれませんが、ひとつのことを極めると他のことへの応用が利きやすくなります。
たとえば野球選手にはゴルフが得意な選手が多いです。野球のスイングとゴルフのスイングが似ていることもありますし、ボールをとらえる感覚は相通じるものがあります。
また冬季オリンピックで採用されているボブスレーでは、日本代表強化のために他競技出身者を積極的に採用しています。
少し昔でいえば、陸上の短距離で夏季オリンピックに出場した選手が、ボブスレーの代表として冬季オリンピックに出場したことがありました。
このように何かを極めた人は他にも必ず応用ができます。
黒板の話でいえば、「黒板を毎日きれいに消す」ことができた彼は、黒板を消すという単純な作業をとことん深めることに成功しました。
そうすると、何か勉強とつながる点を見い出せたのでしょう。毎日努力することの重要性だったのかもしれませんね。
ふたつの事象がつながれば、黒板を毎日消し続けたという努力の体験があるわけですから、勉強に応用するのは容易です。
さらに彼に追い風が吹きます。
努力を続けられる人として、Y先生が注目し始めました。
なんと近寄りがたいY先生とも気軽に話せるようになって、私たちが得難いような物理の話を吸収していきました。さらにY先生から聞いた他の教科の先生方からも目をかけられるようになりました。
また彼はクラスメートからの信頼も勝ち取りました。そうすると彼がクラスのリーダーとなり、信頼に足るような行動をとるようになり、人間的にも飛躍していきました。
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極めれば広がる
今回は黒板消しの達人が学力も人間力も飛躍した話としてご紹介しましたが、これは私たちの医療分野でも言えることです。
私は股関節のリハビリを紹介するセラピストとして活動しています。
本当は全身の勉強をするべきなのでしょうが、基本的には股関節の勉強に多くの時間を割きます。
やっていることは股関節の勉強だけでも、なぜか腰や肩の治療がうまくできるようになっていることにある日気付きました。
なぜでしょうか?
股関節の治療では、股関節だけを診ることはありません。腰や膝関節が股関節にどのような影響を与えているかも重要な治療のポイントになってきます。
股関節を極めようと努力することは、周辺症状にも自然と目を配ることにつながり、最終的に腰や肩の治療にもつながっていったのです。
これは私にとってはすごく興味深い経験で、それを感じたときに黒板消しの達人を思い出したのです。
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解剖学が苦手なら
では解剖学が苦手で、どうすれば覚えられるのでしょうか。
答えは苦手な解剖学をいやいや努力するのではなく、得意な科目を徹底的に勉強してください。
生理学が得意なら、生理学を思いっきり勉強しましょう。ここでいう思いっきりとは、誰にも負けないぐらいで、テストでいえば毎回100点とれるぐらいです。
そうすれば解剖学は自然と頭に入っています。
たとえば生理学であれば、肝臓がどのような機能を有しているか覚える必要があります。
肝臓の機能を考えるなら、肝臓の位置や、肝臓に出入りする門脈や動静脈、胆管を知る必要がありますし、胆管を知れば胆嚢の位置や機能を知る必要に迫られます。
生理学を極めることが自信にもなりますし、生理学にも存分に解剖学の要素が入っていることに気づくと思います。
これは肝臓などの内蔵の問題だけではなく、筋肉の起始停止、神経、血管でもすべていえることです。
そして何よりひとつを極めたという自信が自分を突き動かしてくれるようになり、少々のことではへこたれなくなります。
またY先生がその生徒に目をかけたように、自信がみなぎっている生徒には周りから良い風が吹くようになります。
周りの友だちに教えることで知識を再確認して地力が向上したり、みんなが知らない情報を先生が教えてくれるようになったり。
何か苦手なことがある人は、苦手な分野を無理矢理改善するよりも、得意な分野を極めることに努力してみましょう。そうすれば、苦手だった分野や科目にも不思議とつながっていきますし、何か見えてくるものがあるでしょう。
間違っても受験勉強で英単語を覚えたように、解剖学の本とにらめっこするなんてやめてくださいね。