理学療法士を辞めていく人が増えています。
具体的にどんなことが起こっているのか、今日はご紹介します。
ある同僚が大学の先生と食事に行ったときの話をしてくれました。その食事会には同級生数名も駆けつけたそうですが、中には理学療法士を辞めて他の職についている人もいたそうです。
その大学の先生はたくさんの学生を見ている中で、やはり理学療法士に向いているか向いていないか、その見極めができるそうです。
ただし向いていない学生がいても、「あなたは理学療法士には向いていないから、辞めて他の職を目指した方がいい」と言うことはないそうです。
いや正しくは、立場上言えないそうです。
大学側からすれば学生はお客さんですから、客がたくさん逃げていくようなことは避けたいです。しかもたくさん学生が辞めていくと噂が広まれば、入学を希望する学生の数も減ってしまいますからね。
でもやっぱりそのあたりは心苦しいというか、ご自身の中では葛藤もあるようで、卒業生にはその胸の内を話してくれたそうです。
若手が辞めていく現状
理学療法士になり、その後違う職業に転職する人が増えてきました。
実はこれまでも理学療法士になってすぐに辞めたり、仕事を変えたりする人は一定数いました。ただ近年養成校が激増したことにより新卒者が増え、その傾向に拍車がかかってきたように思えます。
転職したり、辞めたりする人は若手に多いという傾向もあります。特に理学療法士になって5年もたたないうちに辞めていく人が増えています。
私は理学療法士になり12年目ですが、37人で卒業した同級生のうち理学療法士を辞めたのは、聞いている限りでは1人だけです。それ以外の36人はいまも理学療法士を続けています。
年齢を重ねれば、特に女性は結婚や出産、子育てなどの事情で辞める人もでてくるかもしれませんが、今回取り上げている話はそういうことではありません。
「仕事に合わない」「思っていた仕事ではなかった」「給料が安い」「他の仕事をやりたくなった」などの理由で辞めていく人が増えているということです。
これは一体なぜでしょうか。
1つは養成校の激増により誰でも入学できるようになったこと、もう1つは大学が増えたことが背景にあると思います。
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全入学間近
こちらのブログでは何度もお伝えしていますが、養成校(特に大学)が急増し、理学療法士の学校に入れる可能性が高くなってきています。
偏差値のことを言うと申し訳ないですが、40ちょっとで入学できる学校もあり、少し勉強をすれば誰でも入学できます。
しかもこれからさらに少子化が進み、大学・専門学校全入学時代も間近に迫ってきています。
そうなると、「とりあえず資格」とか、「なんか良さそう」とか、そんな漠然として理由で理学療法士の学校に入学する人も増えてきます。
以前なら養成校が少なくてすごい倍率だったので、なりたければ勉強するしかなかったときもありましたが、いまはそんなことありません。
指定校推薦を使えば、本当に誰でもどこかの学校に入学できるようになってきています。
そうなってくると、理学療法士のことをよく分からないまま理学療法士になる人も増えてくるでしょう。
なってはみたものの、「なんか思ってたのと違う」「向いていない」と言って、辞めていく若手が増えるのも頷けます。
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大学卒業生の落とし穴
大学が増えること自体に問題があるわけではありません。ただ大学生活を過ごすこと、大学を卒業することによる落とし穴もありそうです。
私は専門学校卒ですので、理学療法士の資格を取得するためにだけ学校に通いました。
専門学校には他学科もありましたが、身近にいたのは作業療法学科ぐらいです。
大学ではリハビリテーション学部などに入学しても、法学部、文学部、経済学部、工学部、理学部、薬学部、医学部などの学生が周りにいます。
そうするとたくさんの進路や可能性が見えますので、どうしても目移りすることもあります。
また大学を卒業するといわゆる学士授かり、大卒という肩書を得ることになります。
大卒だという看板は、専門学校卒よりも他職種への転職を可能にするのかもしれません。
もちろん実際には理学療法士のことしかしりませんから、いきなり製造業やサービス業にいっても即戦力とはほど遠いでしょう。
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まとめ
若手理学療法士が離れていく現状についてお伝えしてきました。
若手が業界を離れていくことは、もちろん制度やいまの団体に問題もあるのでしょうが、辞めていく若手にも問題は多いです。
大学にしろ専門学校にしろ、卒業するまでには約500万円の学費がかかります。
そんな大金と20歳前後の貴重な時間を捨てて、他の職業に移るのはもたいないです。
理学療法士になりたいと思うなら、しっかりと仕事のことを調べてください。その上で本当になりたいと思えば、理学療法士を目指せばいいでしょう。